
毎日何気なく使っているお湯。朝のコーヒー、料理、お風呂、食器洗い――私たちの生活に欠かせないお湯を沸かすために、実は家庭のガス代の約40%が使われています。月々のガス代が7,000円なら、そのうち約2,800円がお湯関連のコストです。しかし、多くの家庭では「ガス代ってこんなもの」と諦めてしまっているのが現状です。実際のデータを分析すると、適切な知識と工夫があれば、年間で2万円から3万円以上のガス代削減が十分に可能です。この記事では、すぐに実践できる具体的な節約テクニックから、長期的なコスト削減まで、お湯を沸かすガス代を賢く抑える方法を徹底解説します。
■お湯を沸かすガス代の実態を知る
節約を始める前に、まず現状を正確に把握することが重要です。自分の家庭でどれだけのガス代がかかっているのか、何にどれだけ使われているのかを知ることで、効果的な対策が見えてきます。
【一般家庭の平均ガス使用量とコスト】
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の平均ガス代は月額約5,000円から7,000円です。都市ガスとプロパンガスでは料金体系が大きく異なり、プロパンガスは都市ガスの1.5倍から2倍の料金になることも珍しくありません。
4人家族の標準的な家庭では、都市ガスで月額6,500円程度、プロパンガスでは9,000円から12,000円程度が目安となります。単身世帯なら都市ガスで3,000円から4,000円、プロパンガスで5,000円から6,000円程度です。
意外と知られていませんが、ガス使用量は季節によって大きく変動します。冬場は夏場の1.5倍から2倍のガス使用量になることが一般的です。これは給水温度が低くなることで、お湯を沸かすために必要な熱量が増えるためです。
【お湯を沸かす行為が家庭のガス代に占める割合】
家庭で使用するガスの用途別内訳を見ると、給湯が全体の約40%、お風呂が約30%、調理が約20%、暖房が約10%となっています。つまり、お湯を沸かす行為だけで実に70%もの割合を占めているのです。
調理でお湯を沸かす際のガス代は、1リットルの水を沸騰させるのに都市ガスで約2.5円、プロパンガスで約4円かかります。毎日やかんで2リットルのお湯を沸かすだけでも、年間で都市ガスなら約1,800円、プロパンガスなら約2,900円になります。
給湯器でお湯を作る場合、設定温度40度のお湯を200リットル使用すると、都市ガスで約70円、プロパンガスで約110円のコストがかかります。シャワーを15分使うと約60リットル、お風呂一杯で約180リットルですから、毎日の使用量を考えると大きな金額になることが分かります。
【季節別のガス代変動パターン】
下記の表は、標準的な4人家族の季節別ガス代の推移です。
|
季節 |
都市ガス月額 |
プロパンガス月額 |
主な要因 |
|
春(3-5月) |
5,500円 |
8,500円 |
給湯・調理中心 |
|
夏(6-8月) |
4,500円 |
7,000円 |
給水温度が高く効率的 |
|
秋(9-11月) |
6,000円 |
9,000円 |
給水温度の低下開始 |
|
冬(12-2月) |
8,500円 |
13,000円 |
給水温度低下・暖房使用 |
冬場のガス代が跳ね上がる最大の理由は、給水温度の低下です。夏場の水道水温度は約25度ですが、冬場は約5度まで下がります。40度のお湯を作る場合、夏場は15度上げればよいのに対し、冬場は35度も上げる必要があり、2倍以上のエネルギーが必要になるのです。
この季節変動を理解しておくことで、冬場の対策により重点を置くべきだということが分かります。実際、冬場の節約テクニックを徹底するだけで、年間のガス代を大幅に削減できる可能性があります。
■お湯を沸かすガス代を大幅削減できる給湯器の使い方
給湯器は家庭のガス代を左右する最重要機器です。使い方次第で月々のコストが数千円単位で変わることも珍しくありません。
【設定温度の最適化で月額800円のガス代節約】
給湯器の設定温度を見直すだけで、驚くほどガス代を削減できます。多くの家庭で給湯器の温度が必要以上に高く設定されているケースが見られます。
設定温度を5度下げると、ガス使用量は約10%削減できます。月額7,000円のガス代なら、給湯分の40%(2,800円)の10%で月280円、年間では3,360円の節約になります。さらに、混合水栓で水と混ぜる必要がなくなるため、水道代の節約にもつながります。
用途別の最適温度は以下の通りです。食器洗いは38度から40度、洗面・手洗いは35度から38度、シャワー・お風呂は40度から42度が適温です。一番高温が必要なお風呂に合わせて45度や48度に設定している家庭が多いのですが、これは明らかに無駄です。
実は、季節によって設定温度を変えることも効果的です。夏場は給水温度が高いため、設定温度を38度程度に下げても十分快適に使えます。冬場だけ40度から42度に上げるという使い方で、年間を通じてガス代を抑えられます。
【追い焚き回数を減らしてお湯のガス代を削減する生活リズム】
お風呂の追い焚き機能は非常に便利ですが、ガス代がかかる機能でもあります。1回の追い焚きで都市ガスなら約50円、プロパンガスなら約80円のコストがかかります。
家族が時間をあけて入浴すると、その都度追い焚きが必要になります。4人家族で各自が2時間ずつ間隔をあけて入浴すれば、3回の追い焚きで月に4,500円から7,200円ものコストになってしまいます。
できるだけ続けて入浴することで、追い焚きコストを大幅に削減できます。入浴時間をずらせない場合は、保温シートや保温蓋を活用することで、お湯の温度低下を最小限に抑えられます。市販の保温シートは1,000円程度で購入でき、これだけで追い焚き回数を半減できることもあります。
また、残り湯の活用も重要です。翌日の洗濯に使用すれば、水道代の節約にもなります。お風呂のお湯200リットルを洗濯に使えば、水道代が約50円節約できます。月20回で1,000円、年間12,000円の節約です。
【エコモード機能でお湯を沸かすガス代を効果的に削減】
最近の給湯器には「エコモード」や「省エネモード」が搭載されています。この機能を正しく使えば、さらなるガス代削減が可能です。
エコモードでは以下のような制御が行われます。
- 設定温度より若干低めの温度でお湯を供給し、ガス消費を抑える
- 給湯器の作動時間を最適化し、無駄な加熱を防ぐ
- 保温時の温度管理を効率化し、熱損失を最小限にする
- 使用パターンを学習し、必要なタイミングでのみ加熱する
これらの機能により、従来モードと比較して10%から15%のガス代削減が期待できます。月額7,000円なら月700円から1,050円、年間8,400円から12,600円の節約になります。
ただし、エコモードには注意点もあります。設定温度に到達するまでの時間が若干長くなることや、一度に大量のお湯を使うと温度が安定しないことがあります。そのため、朝の忙しい時間帯だけ通常モードにするなど、生活スタイルに合わせて使い分けることをおすすめします。
エコモード機能がない古い給湯器をお使いの場合は、タイマー機能を活用しましょう。使用しない深夜や外出時に給湯器の電源を切るだけでも、待機電力と僅かな保温コストを削減できます。
■調理でお湯を沸かす時のガス代を抑える7つのコツ
毎日の調理でお湯を沸かす際にも、ちょっとした工夫でガス代を大幅に削減できます。
【やかんとケトルどちらがお湯を沸かすガス代が安い?】
お湯を沸かす方法として、ガスコンロでやかんを使う方法と電気ケトルを使う方法があります。どちらが経済的なのでしょうか。
1リットルの水を沸騰させるコストを比較すると、都市ガス+やかんで約2.5円、プロパンガス+やかんで約4円、電気ケトルで約3円です。都市ガスエリアならガスコンロが最も経済的で、プロパンガスエリアなら電気ケトルの方がお得になります。
ただし、少量のお湯を沸かす場合は電気ケトルが有利です。200mlのお湯を沸かす場合、電気ケトルなら約0.6円ですが、ガスコンロでやかんを使うと予熱や熱の逃げが大きく、約1.5円から2円かかります。コーヒー1杯分のお湯なら電気ケトルが効率的です。
一方、2リットル以上の大量のお湯を沸かすなら、ガスコンロの方が圧倒的に早く経済的です。料理で大量のお湯が必要な時は、ガスコンロを使う方が賢明でしょう。
【鍋の選び方でお湯を沸かすガス消費量が変わる】
実は鍋の選び方一つで、ガス代が20%から30%も変わることがあります。
効率の良い鍋の条件は次の通りです。底が平らで厚みがあること、熱伝導率の高い素材であること、鍋底の直径がコンロの火口サイズに合っていること、そして鍋の側面が直線的であることです。
アルミ製やステンレス製の鍋は熱伝導率が高く、銅製の鍋はさらに効率的ですが価格が高めです。多層構造の鍋は保温性に優れ、一度沸騰させた後は弱火でも温度を保てます。
逆に底が丸い中華鍋や、底が薄い安価な鍋は熱効率が悪く、ガスの無駄遣いになります。また、鍋底が汚れていると熱伝導が悪くなるため、定期的な手入れも重要です。
鍋のサイズ選びも大切です。コンロの火口から炎がはみ出すような大きな鍋や、逆に小さすぎる鍋は熱効率が落ちます。使用するコンロの火口に対して適切なサイズの鍋を選びましょう。
【蓋を使うだけでお湯を沸かすガス代が25%節約できる理由】
お湯を沸かす際に蓋をするかしないかで、ガス代が大きく変わります。実際の測定データでは、蓋をした場合としない場合で、沸騰までの時間が約25%短縮され、ガス使用量も同程度削減できます。
蓋をすることで、水面からの熱の放散を防ぎ、効率的に水温を上昇させられます。特に冬場は室温が低いため、蓋の有無による差がさらに大きくなります。
1日2回、2リットルの水を沸かす家庭なら、蓋を使うだけで年間450円から700円の節約になります。小さな習慣ですが、積み重なれば大きな差になります。
また、お湯が沸騰したら火を止める、または極弱火にすることも重要です。グツグツと沸騰し続けさせる必要はなく、保温程度の火力で十分です。煮込み料理なども、沸騰後は蓋をして弱火にすることで、ガス代を抑えながら美味しく仕上がります。
【お湯を沸かす時の火力調整の黄金ルール】
お湯を沸かす際の火力調整には、実はゴールデンルールがあります。
最初は強火で素早く加熱し、沸騰したら弱火または消火する。これが基本です。最初から弱火でじっくり加熱すると、熱が逃げる時間が長くなり、結果的にガス代が高くつきます。
炎が鍋底からはみ出すのは明らかな無駄です。炎の先端が鍋底に当たる程度の火力が最も効率的です。炎がはみ出している場合、そのエネルギーの約20%が無駄になっています。
ガスコンロに複数の火口がある場合、小さな鍋には小さな火口を使いましょう。1リットル以下の少量なら小バーナー、2リットル以上なら大バーナーが適切です。
さらに、余熱を活用することも重要です。パスタを茹でる場合、沸騰したら火を止めて蓋をし、余熱で茹で上げることもできます。これにより茹で時間の半分以上のガス代を節約できます。
以下、調理時のガス節約ポイントをまとめます。
- 最初は強火で素早く加熱、沸騰後は弱火または消火
- 炎が鍋底からはみ出さないよう火力調整
- 必ず蓋を使用して熱の放散を防ぐ
- 鍋底の水滴を拭き取ってから火にかける
- 複数の調理をする場合は段取りを考えて効率化
- 余熱調理を積極的に活用する
- 圧力鍋を使えば調理時間とガス代を大幅削減
これらのテクニックを日常的に実践するだけで、調理に使用するガス代を30%から40%削減できます。月のガス代が7,000円で調理が20%(1,400円)を占めるなら、月420円から560円、年間5,000円から6,700円の節約になります。
■給湯温度設定の見直しでお湯を沸かすガス代を年間15,000円削減
給湯器の温度設定は、最も効果的なガス代削減ポイントの一つです。多くの家庭で無意識に高温設定のままになっており、大きな無駄が生じています。
【設定温度1度下げるとお湯のガス代は年間いくら節約?】
給湯器の設定温度を1度下げることで、ガス使用量は約2%削減できます。月額ガス代7,000円の家庭で給湯が40%(2,800円)を占めるなら、1度下げるだけで月56円、年間672円の節約です。
5度下げれば約10%の削減となり、月280円、年間3,360円の節約になります。10度下げられれば月560円、年間6,720円もの削減が可能です。
実際のところ、多くの家庭では設定温度が48度や50度と不必要に高く設定されています。これは、昔の給湯器では高温設定が必要だったことや、「高い方が安心」という心理が働いているためです。しかし現代の給湯器は性能が向上しており、40度から42度の設定で十分快適に使用できます。
設定温度を下げることで得られるメリットは、ガス代削減だけではありません。やけどのリスクが減少すること、配管への負担が軽減され給湯器の寿命が延びること、そして混合水栓での水との混合が不要になり水道代も節約できることなどがあります。
【用途別の最適なお湯の温度設定】
用途によって必要な温度は異なります。それぞれに適した温度を知っておくことで、無駄なく快適に使用できます。
下記の表で用途別の最適温度を確認しましょう。
|
用途 |
推奨温度 |
理由 |
|
食器洗い |
38-40度 |
油汚れが落ちやすく手にも優しい |
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洗面・手洗い |
35-38度 |
快適な温度で肌への負担が少ない |
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シャワー |
40-42度 |
体温より少し高めが快適 |
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お風呂 |
40-42度 |
リラックスできる適温 |
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床暖房 |
35-40度 |
足元を暖める適温 |
この表から分かるように、最も高温が必要なのはシャワーとお風呂の40度から42度です。多くの給湯器には「優先」ボタンがあり、お風呂場のリモコンで温度設定を優先できます。
おすすめの設定方法は、基本設定を40度にしておき、夏場や食器洗い時には38度に下げ、冬の入浴時だけ42度に上げるという使い方です。この方法なら、用途に応じた最適温度を保ちながらガス代を抑えられます。
また、給湯器には「エコ給湯」や「ぬるめ」といったボタンがある機種もあります。これらを活用すれば、ワンタッチで省エネモードに切り替えられます。取扱説明書を確認して、お使いの給湯器の機能を最大限に活用しましょう。
【家族構成別のおすすめお湯温度設定】
家族構成によっても最適な温度設定は変わってきます。
単身世帯では、基本設定を38度にすることをおすすめします。シャワーも38度で十分快適ですし、冬場だけ40度に上げれば問題ありません。食器洗いも38度で十分です。
夫婦2人の世帯では、40度を基本設定とし、夏場は38度に下げましょう。お互いの入浴時間を合わせることで、追い焚きコストも削減できます。
小さな子供がいる家庭では、安全面を考慮して40度の設定が適切です。これなら子供が誤って蛇口をひねってもやけどの心配が少なくなります。チャイルドロック機能がある給湯器なら、さらに安心です。
高齢者がいる世帯では、42度程度の設定が快適です。高齢になると体感温度が下がる傾向があるためです。ただし、熱すぎるお湯は血圧の急上昇を招く危険があるので、43度以上には設定しないよう注意が必要です。
4人以上の家族世帯では、40度から42度の設定とし、全員が続けて入浴するルールを作ることが最も効果的です。1番目と4番目の入浴時間が2時間以上空くと、追い焚きで余分なガス代がかかってしまいます。
■お風呂のお湯を沸かすガス代削減術
お風呂は家庭のガス使用量の約30%を占める大きなコストポイントです。ここを攻略すれば、大幅な節約が可能になります。
【入浴タイミングの工夫でお湯のガス代を削減】
お風呂のガス代を抑える最大のポイントは、家族全員が短時間で続けて入浴することです。最初にお湯を張ってから最後の人が入るまでの時間が短いほど、熱の損失が少なくガス代も安く済みます。
実際のデータを見てみましょう。1番目の人が入浴してから2番目の人が入るまでの時間が30分なら、追い焚きなしでも入れます。1時間なら1度から2度程度の温度低下で済み、追い焚きは数分で十分です。しかし2時間空くと、3度から5度下がり、追い焚きに約50円かかります。
4人家族で各自が2時間ずつ間隔を空けて入浴すると、3回の追い焚きで都市ガス150円、プロパンガス240円のコストになります。これが毎日続けば、月4,500円から7,200円もの無駄になるのです。
理想は家族全員が帰宅後1時間以内に入浴を済ませることです。難しい場合は、保温シートや保温蓋を活用しましょう。100円ショップで購入できる保温シートでも、温度低下を2度から3度抑えられます。
また、お湯を張る時間帯も重要です。冬場は夕方以降に気温が下がるため、夕食前の明るい時間帯にお湯を張り、食後すぐに入浴を開始すると効率的です。
【お風呂の保温vs追い焚きのガス代コスト比較】
お風呂の保温機能と追い焚き機能、どちらを使う方が経済的なのでしょうか。
保温機能は設定温度を保つために定期的に加熱する機能です。機種によって異なりますが、一般的に1時間あたり都市ガス15円から25円、プロパンガス25円から40円程度のコストがかかります。
一方、追い焚き機能は冷めたお湯を再度温める機能で、1回あたり都市ガス40円から60円、プロパンガス65円から100円のコストです。
では、どのように使い分けるべきでしょうか。家族が1時間以内に続けて入浴するなら、保温も追い焚きも不要です。1時間から2時間空く場合は保温機能を使った方が経済的で、2時間以上空くなら一度保温を切って、次の人が入る直前に追い焚きした方がお得になります。
ただし、最新のエコキュートや高効率給湯器では、保温効率が向上しており、3時間程度なら保温の方が経済的な場合もあります。お使いの給湯器の取扱説明書で保温機能の電気代やガス代を確認しておくことをおすすめします。
さらに経済的なのは、物理的な保温です。市販の保温シートは1,000円から2,000円で購入でき、これを使えば保温機能や追い焚きの頻度を大幅に減らせます。投資回収期間は1ヶ月から2ヶ月程度ですから、ぜひ導入を検討しましょう。
【シャワーと浴槽のお湯どちらがガス代は経済的?】
シャワーだけで済ませた方がガス代は安いのでしょうか。それとも浴槽にお湯を張った方がお得なのでしょうか。
浴槽一杯(約180リットル)のお湯を張るコストは、都市ガスで約60円から70円、プロパンガスで約100円から120円です。
一方、シャワーは1分間に約10リットルのお湯を使います。15分間のシャワーなら150リットルで、都市ガス約50円から60円、プロパンガス約85円から100円のコストです。
つまり、シャワーを15分以上使うなら、浴槽にお湯を張った方が経済的になります。特に2人以上で入浴するなら、明らかに浴槽の方がお得です。
ただし、夏場の短時間入浴や、1人暮らしで5分程度のシャワーで済む場合は、シャワーの方が経済的です。季節や家族構成によって使い分けるのが賢明でしょう。
節約の観点からは、浴槽にお湯を張り、シャワーは髪を洗う時だけ使用し、体を洗うのは浴槽のお湯を使うという方法が最も経済的です。シャワーヘッドを節水型に交換すれば、さらに30%から50%の水道代とガス代を削減できます。
■電気ケトルとガスコンロでお湯を沸かすコストの徹底比較
少量のお湯を頻繁に沸かす場合、どの方法が最も経済的なのでしょうか。詳しく比較してみましょう。
【少量のお湯を沸かすならどちらがガス代は安い?】
コーヒー1杯分(約200ml)のお湯を沸かすコストを比較します。
電気ケトルは約0.6円、都市ガス+やかんは約0.5円から0.7円、プロパンガス+やかんは約0.8円から1.2円です。少量のお湯なら都市ガスエリアではガスコンロとほぼ同等、プロパンガスエリアでは電気ケトルの方が明らかに経済的です。
ただし、ガスコンロの場合はやかんの予熱や熱の逃げがあるため、実際のコストは理論値より高くなります。特に小さなやかんで少量のお湯を沸かす場合、効率が悪くなります。
一方、電気ケトルは沸騰までの時間も短く、必要な量だけ正確に沸かせるため、利便性では圧倒的に優れています。200mlなら1分から1分半で沸騰します。
1日5回、コーヒー用にお湯を沸かす家庭なら、プロパンガスから電気ケトルに変えるだけで、1日2円から3円、年間700円から1,000円の節約になります。
【大量のお湯を沸かす場合のガス代最適解】
2リットル以上の大量のお湯を沸かす場合は、ガスコンロが圧倒的に有利です。
2リットルの水を沸騰させるコストは、都市ガス+やかんで約5円、プロパンガス+やかんで約8円、電気ケトルで約6円です。都市ガスなら最も経済的で、プロパンガスでも電気ケトルとほぼ同等です。
さらに重要なのは時間です。ガスコンロなら2リットルの水を7分から8分で沸騰させられますが、電気ケトルでは10分から12分かかります。料理中に大量のお湯が必要な場合、この時間差は大きな意味を持ちます。
料理で使う大量のお湯は、ガスコンロで効率よく沸かす。朝のコーヒーや紅茶など少量のお湯は、電気ケトルで手軽に沸かす。この使い分けが最も賢い方法です。
また、給湯器のお湯を使うという選択肢もあります。料理の下ごしらえで60度程度のお湯が必要なら、給湯器から直接お湯を鍋に入れてからガスコンロで沸騰させる方が、水から沸かすより30%から40%早く、ガス代も同程度削減できます。
【IHクッキングヒーターでお湯を沸かすガス代との比較】
オール電化住宅で使われるIHクッキングヒーターとガスコンロ、どちらが経済的なのでしょうか。
下記の表で各調理器具のコスト比較を見てみましょう。
|
調理器具 |
1L沸騰コスト |
2L沸騰コスト |
沸騰時間(1L) |
沸騰時間(2L) |
|
都市ガス+やかん |
約2.5円 |
約5円 |
約4分 |
約7分 |
|
プロパンガス+やかん |
約4円 |
約8円 |
約4分 |
約7分 |
|
電気ケトル |
約3円 |
約6円 |
約4分 |
約10分 |
|
IHクッキングヒーター |
約3.5円 |
約7円 |
約3.5分 |
約6.5分 |
IHクッキングヒーターは熱効率が高く、沸騰時間は最も短いものの、電気料金が高いためコスト面では都市ガスには及びません。ただし、プロパンガスと比較すれば経済的です。
重要なのは、オール電化住宅では時間帯別の電気料金プランを活用できることです。深夜電力が安い時間帯にお湯を沸かして保温ポットに入れておけば、日中のガス代や電気代を大幅に削減できます。
また、IHクッキングヒーターは鍋底を直接加熱するため、やかんの材質による効率差が少なく、安全性も高いというメリットがあります。小さな子供や高齢者がいる家庭では、コスト面だけでなく安全面も考慮して選択するとよいでしょう。
■ガス会社・料金プランの見直しでお湯のガス代固定費を削減
ガスの使い方を工夫するだけでなく、ガス会社や料金プランそのものを見直すことで、さらに大きな節約が可能です。
【都市ガスとプロパンガスの料金差】
都市ガスとプロパンガスでは、料金体系が大きく異なります。一般的に、プロパンガスは都市ガスの1.5倍から2倍の料金になることが多く、地域によっては2.5倍以上になることもあります。
都市ガスは公共料金として規制されており、基本料金と従量料金が明確に定められています。東京ガスの場合、標準的な使用量(30㎥)で月額約5,000円から6,000円程度です。
一方、プロパンガスは自由料金制で、販売店が自由に価格を設定できます。同じ使用量でも販売店によって月額7,000円から15,000円と大きな差があります。実は、多くの消費者がこの事実を知らず、高い料金を払い続けているのです。
プロパンガスを使用している家庭では、まず現在の料金が適正かどうかを確認しましょう。プロパンガス料金消費者協会などのサイトで、お住まいの地域の適正価格を調べられます。現在の料金が適正価格より20%以上高い場合は、ガス会社の変更を検討する価値があります。
【ガス会社変更でお湯のガス代削減メリット】
都市ガスエリアでは、2017年のガス小売全面自由化により、ガス会社を自由に選べるようになりました。従来の大手ガス会社だけでなく、新規参入した電力会社や通信会社もガスを販売しています。
ガス会社を変更するメリットは、月額料金が5%から10%安くなることや、電気とセットで契約するとさらに割引が受けられること、ポイントプログラムや特典が充実していることなどです。月額5,000円のガス代が10%削減されれば、年間6,000円の節約になります。
ガス会社変更の手続きは意外と簡単です。新しいガス会社に申し込むだけで、解約手続きや工事は新しいガス会社が代行してくれます。費用も基本的に不要で、工事も必要ありません。
ただし、賃貸住宅の場合は建物全体でガス会社が決まっていることが多く、個別に変更できないケースもあります。まずは管理会社や大家さんに確認してみましょう。
プロパンガスの場合も、ガス会社の変更は可能です。現在の料金と他社の料金を比較し、年間2万円以上安くなるなら変更を検討する価値があります。プロパンガス会社の変更では、無料でガス設備を提供する代わりに契約期間を設定している場合があるので、契約内容をよく確認することが重要です。
【お湯を沸かすガス代に最適な料金プランの選び方】
ガス会社によって、さまざまな料金プランが用意されています。自分の生活スタイルに合ったプランを選ぶことで、さらなる節約が可能です。
一般的な料金プランには、標準プラン、床暖房プラン、エネファームプラン、セット割プランなどがあります。
床暖房を使用している家庭では、冬場のガス使用量が大幅に増えます。床暖房プランは従量料金が割安に設定されているため、冬場のガス代を大きく削減できます。東京ガスの床暖房プランでは、冬場のガス代が標準プランより15%から20%安くなることもあります。
エネファームやエコウィルなどの家庭用燃料電池を設置している場合は、専用プランを選ぶことで割引が受けられます。これらの設備は初期投資が大きいものの、ガス代と電気代の両方を削減できるため、長期的には経済的です。
電気とガスをセットで契約するセット割プランも人気です。同じ会社で電気とガスを契約すると、月額200円から300円の割引が受けられることが多く、年間2,400円から3,600円の節約になります。さらに、請求書が一つにまとまり、ポイントも貯めやすくなるというメリットがあります。
料金プランを選ぶ際は、自分の家庭のガス使用量と使用用途を把握することが重要です。過去1年分のガス使用量を確認し、複数のプランでシミュレーションしてみましょう。多くのガス会社のウェブサイトには料金シミュレーターがあり、簡単に比較できます。
■給湯器の経年劣化とお湯を沸かすガス代の関係
給湯器は使用年数が経つにつれて効率が低下し、ガス代が増加します。適切なタイミングでの買い替えが、長期的な節約につながります。
【古い給湯器でお湯を沸かすガス代の燃費悪化】
給湯器の標準的な寿命は10年から15年とされていますが、実際には使用環境や頻度によって大きく異なります。設置から8年を過ぎると、徐々に効率が低下し始めます。
古い給湯器では、以下のような問題が発生します。熱交換器の汚れや劣化により熱効率が低下すること、燃焼効率が悪化し不完全燃焼が増えること、温度調整機能が不安定になり無駄な加熱が増えること、そして配管の劣化により熱損失が増加することです。
10年以上使用した給湯器では、新品時と比較して15%から25%も効率が低下している可能性があります。月額ガス代7,000円なら、1,050円から1,750円が無駄になっている計算です。年間では12,600円から21,000円もの損失になります。
給湯器の効率低下を示すサインには、お湯の温度が不安定になる、設定温度になるまで時間がかかる、異音がする、給湯器から黒い煙が出る、ガスの臭いがするなどがあります。これらの症状が出たら、早めに点検を受けることをおすすめします。
【給湯器の買い替えタイミングの見極め方】
給湯器の買い替えタイミングは、設置からの年数だけでなく、修理費用と買い替え費用のバランスで判断すべきです。
一般的なガイドラインとして、設置から7年未満なら修理、7年から10年なら修理費用が5万円以上なら買い替え、10年以上なら買い替えを検討、という基準があります。
修理費用が10万円を超える場合や、1年に複数回修理が必要になる場合は、たとえ設置から7年程度でも買い替えた方が経済的です。古い給湯器を維持するための修理費用と増加したガス代を合計すると、新品を購入するコストを上回ることがあります。
買い替えのベストタイミングは、完全に故障する前です。真冬に突然お湯が出なくなると、緊急対応となり工事費用が割高になります。また、選択肢も限られてしまいます。秋頃に給湯器の状態をチェックし、不安があれば冬前に買い替えを済ませておくことをおすすめします。
【エコジョーズ等でお湯を沸かすガス代の最新機器導入効果】
最新の高効率給湯器に買い替えることで、ガス代を大幅に削減できます。
エコジョーズは排熱を再利用する高効率給湯器で、従来型と比較して約13%から15%のガス代削減が可能です。月額7,000円のガス代なら、月910円から1,050円、年間10,920円から12,600円の節約になります。
エコジョーズの本体価格は従来型より5万円から10万円高いですが、ガス代の節約により5年から7年で元が取れます。給湯器の寿命が15年程度あることを考えると、トータルコストでは明らかに有利です。
さらに高効率なのがエコキュートやエネファームです。エコキュートは深夜の安い電気を使ってお湯を作るため、オール電化住宅なら給湯コストを50%以上削減できます。エネファームはガスで発電しながら給湯も行うため、光熱費全体を30%から40%削減できます。
ただし、これらの機器は初期投資が大きく、エコキュートで40万円から60万円、エネファームで100万円以上かかります。国や自治体の補助金制度を活用すれば、10万円から50万円の補助を受けられる場合もあるので、導入前に必ず確認しましょう。
給湯器を選ぶ際は、家族構成や使用量に合った容量を選ぶことも重要です。大きすぎる給湯器は無駄が多く、小さすぎると不便です。専門業者に相談し、自分の家庭に最適な機種を選びましょう。
■今日から実践できるお湯を沸かすガス代節約チェックリスト
これまで紹介したテクニックの中から、特に効果的で実践しやすいものをまとめました。
すぐに実践できるガス代節約の10のポイントは以下の通りです。
- 給湯器の設定温度を40度から42度に下げる(年間3,000円から6,000円節約)
- お湯を沸かす時は必ず蓋を使用する(年間500円から700円節約)
- 家族全員が1時間以内に続けて入浴しお湯の追い焚きを減らす(年間5,000円から10,000円節約)
- シャワーは15分以内に抑え、節水型シャワーヘッドを使う(年間3,000円から5,000円節約)
- お湯を沸かす際、炎が鍋底からはみ出さないよう火力調整する(年間1,000円から2,000円節約)
- 少量のお湯は電気ケトル、大量のお湯はガスコンロで沸かす(年間500円から1,000円節約)
- お風呂のお湯に保温シートや保温蓋を活用する(年間2,000円から4,000円節約)
- 給湯器のエコモードを活用してお湯を効率的に作る(年間3,000円から5,000円節約)
- ガス会社や料金プランを見直す(年間5,000円から10,000円節約)
- 10年以上使用した給湯器は高効率タイプに買い替える(年間10,000円から15,000円節約)
これらすべてを実践すれば、年間33,000円から58,700円、平均で約45,000円のガス代削減が可能です。月額に換算すると約3,750円、4人家族なら1人あたり月937円の節約になります。
節約は無理なく続けられることが重要です。まずはこのチェックリストの中から、自分の生活に取り入れやすいものを3つ選んで実践してみましょう。習慣化してから、徐々に他の項目も追加していくことで、無理なくガス代を削減できます。
■お湯を沸かすガス代節約の重要ポイント
お湯を沸かすガス代の節約について、この記事で紹介した重要なポイントをまとめます。
お湯を沸かすガス代削減の基本
- 家庭のガス代の約70%がお湯を沸かす行為に使われている
- 給湯器の設定温度を5度下げるだけで年間3,000円以上のガス代節約が可能
- 調理時に蓋を使用するとお湯を沸かすガス代が25%削減できる
- 冬場は給水温度が低いため、お湯を沸かすガス代が夏場の2倍になる
すぐに実践できる節約術
- お風呂は家族全員が1時間以内に続けて入浴し、追い焚きコストを削減する
- お湯を沸かす際は炎が鍋底からはみ出さないよう火力調整する
- 少量のお湯は電気ケトル、大量のお湯はガスコンロで沸かす
- お風呂のお湯には保温シートを活用し、追い焚き回数を減らす
長期的なガス代削減策
- ガス会社や料金プランを見直すと年間5,000円から10,000円の節約になる
- 10年以上使用した給湯器は高効率タイプへの買い替えを検討する
- エコジョーズなら従来型よりお湯を沸かすガス代が年間10,000円以上安くなる
これらの対策を総合的に実践すれば、お湯を沸かすガス代を年間2万円から5万円削減することが十分に可能です。まずは給湯器の温度設定の確認から始めて、徐々に習慣化していきましょう。お湯を沸かすガス代の賢い節約で、家計に余裕を生み出し、より豊かな暮らしを実現できます。
